前回は審査請求の概要と流れについて解説しました。
審査請求は要件を満たした上で正しい流れで行う必要があります。
少し細かい内容ではありますので、不安な方は前回記事で復習してみてください。
今回は、審査請求をしたあとの流れについて解説していきます。

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審査請求のゴール
審査請求のゴールは、自ら審査請求を取り下げるか裁決を待つかどちらかになります。
まず、取り下げについてですが、裁決があるまでの間であれば、審査請求人はいつでも審査請求を取り下げることができます。
取り下げについては必ず書面で行う必要がありますが、審査庁などの同意は不要です。
続いて裁決についてですが、裁決とは審査庁の判断のことで3種類あります。
裁決は審査庁が記名押印した裁決書によってしなければなりません。
却下裁決
審査請求の内容審査以前に、審査請求の要件に不備があり不適法である場合になされます。
審理そのものを拒絶するのが却下裁決です。
棄却裁決
審査請求の内容に理由が認められない(=行政庁の処分や不作為が適当もしくは妥当と認められる)場合になされるものです。
ざっくりいうと、審理をした結果行政庁の方が妥当であると判断されたということです。
認容裁決
審査請求の内容に理由が認められる(=行政庁の処分や不作為が不当もしくは違法と認められる)場合になされるものです。
ざっくりいうと、審査請求が認められたということです。
ただし、認容裁決には例外があります。
審査請求通りに処分を取消すことによって公の利益に著しい障害が生じる場合です。
処分が違法であったとしても審査庁は棄却裁決ができ、これを事情裁決といいます。
なお、事情裁決をする場合には、裁決の主文において、当該処分が違法または不当であることを宣言しなければなりません。
ここまでの流れをまとめるとこのようになるかと思います。
執行停止とは?
行政の運営を円滑にするため、審査請求がなされたとしても、当該処分の効力や執行は継続されます。
これを執行不停止の原則と言いますが、これを厳守すると審査請求人に不利益が生じる可能性があります。
例えば、懲戒免職処分の効力を停止するような場合があります。
審査請求で争っているのに、懲戒免職されてしまっては意味がないですよね。
このような権利を守るために、処分の効力や執行の全部のにまたは一部を停止することができ、これを執行停止といいます。
執行停止は行政事件訴訟法との比較が必須ですので別の記事でまとめたいと思います。
行政不服審査法における執行停止は、2種類(任意的と義務的)あります。
よく出題されるのは、義務的な執行停止です。
審査請求人の申立てがあった場合、
処分や手続の続行により生ずる重大な損害を避けるために緊急の必要があると認めるときは、審査庁は執行停止をしなければならない。
と規定されています。
この「重大な損害を避けるために緊急の必要がある」という文言は記述でも問われますし、穴埋めや選択肢でもひっかけによく使われます。
このページで一番重要なのでフォントを大きくしておきました。笑
教示とは?
教示とは、処分がなされた相手方(国民)に対して、不服申立てができますよと教えてくれる制度です。
行政不服は複雑かつ普段から慣れているものではないため、適切な情報提供をすることを目的としています。
教示で必須とされる内容は以下の通りです。
- 当該処分につき不服申立てができること
- 不服申立てをすべき行政庁
- 不服申立てができる期間
これらは必ず書面で行う必要があります。
なお、処分を口頭でする場合には、処分自体が比較的軽いこともあり教示の必要はありません。
教示は国民にとってはありがたい制度ですが、もし教示の内容が間違っていた場合はどうすればいいのでしょう。
安心してください。きちんと救済制度が用意されています。
不服申立て先の行政庁を誤った場合
本来、行政庁Aに申し立てるべきところ、行政庁Bに申し立てるよう誤った教示がなされたとします。
審査請求をされた行政庁Bは、審査請求書を処分庁と行政庁Aに送り、審査請求人にその旨を通知しなければなりません。
このように仮に誤った教示がなされた場合でも救済する仕組みが用意されています。
まとめ
今回で行政不服審査法のポイントまとめは終わりになります。
テキストのページが多くて嫌になるかもしれませんが、審査請求の要件と流れ、裁決についてまずは流れを掴んでしまえば大丈夫です。
判例や細かい言い回しなどは問題を解くことで身につけていくのが賢明です。
執行停止や教示は行政事件訴訟法との比較が重要になってきますので、次回以降で解説していきます!
では、また!