前回は、行政手続法の対象として「申請に対する処分」について解説しました。
法的義務と努力義務が混在しますので、ひっかけ問題には注意が必要です。
今回は、「不利益処分」について解説したいと思います。
申請に対する処分」と比較しながら覚えていくことをオススメします!

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不利益処分
不利益処分とは、行政庁が特定の者に対して直接的に義務を課すまたは権利を制限する処分を指します。
申請に対する処分の場合には、「申請されたものに対して」行政庁が判断を下していましたが、不利益処分の場合には、申請の有無を問わない点が異なります。
それでは詳しく見ていきましょう!
処分基準
処分基準とは、不利益処分をするかどうか、またはどのような内容とするかについて、
法の定めに従って判断するための基準のことです。
審査基準と同様に、設定・公開ともに法的義務のように思われるかも知れませんが、
処分基準の場合は、設定及び公開が努力義務となっています。
理由は明快で、処分基準の設定および公開を法的義務としてしまうと、犯罪行為を助長してしまう恐れがあるからです。
・1回目の違反については、罰金100万円
・2回目の違反については、営業停止処分
・3回目の違反については、営業許可の取消し
基準が明確でいいようにも思えますが、
従って、処分基準の設定および公開については努力義務となっているのです。
理由の提示
不利益処分をする場合には、名宛人に対してその理由を示さなければなりません。
不利益処分の裁量を行政庁に委ねてしまうと、名宛人にとって不公平な処分がされかねませんし、処分を不服として争う場合に必要な情報を提供する必要があるからです。
「理由の提示の要件を欠いた」という理由で、不利益処分が違法と判断された判例もあります。
意見陳述手続
不利益処分は、申請に対する拒否処分と比べても、積極的な不利益を受けることになります。
申請に対する拒否処分は、申請が認められないという消極的な不利益しか発生しないからです。
そこで、不利益処分をする前に、「名宛人の言い分も聞こう」というのがこの制度の趣旨です。
従って、行政庁は不利益処分の前に、意見陳述のための手続きをとらなければなりません。
意見陳述の手続きには、不利益の程度が重い場合の「聴聞」と不利益の程度が軽い場合の「弁明の機会の付与」という2種類あります。
それでは詳しく見ていきましょう!
聴聞
聴聞の大まかな流れは以下の通りです。
- 行政庁から名宛人に対して不利益処分の内容などを通知
- 審理(行政庁が指名する職員などが主宰する)
- 主催者が真理の経過を記載した調書を作成
- 行政庁が主宰者の意見を参酌して決定をする
審理方式
口頭審理主義が採用されていますので、裁判と同じようなイメージです。
行政庁と名宛人の双方で意見を戦わせることができますが、審理は原則非公開とされています。
通知を受けたものを「当事者」と呼びますが、主宰者の許可があれば当事者以外の者も聴聞に参加することができます。
当事者以外で聴聞に参加する者を「参加人」と呼ばれ、参加人になるには、「関係人」
(不利益処分について利害関係を有する者)である必要があります。
代理人
当事者は聴聞に関する一切の行為を代理人に任せることができます。
この場合、代理人の資格を書面で証明しなければならず、代理人が資格を失った時は当事者が書面で行政庁に届出る必要があります。
陳述書の提出
当事者や参加人が聴聞の期日に出頭できない場合、陳述書及び証拠書類等を提出することができます。
不利益処分に対して十分に反論ができるよう、行政庁が有する文書等の閲覧請求権が認められています。
閲覧可能な期限は聴聞の通知があった時から聴聞が終結するまでの間です。
弁明の機会の付与
弁明の大まかな流れは以下の通りです。
- 行政庁から名宛人に対して不利益処分の内容などを通知
- 名宛人が行政庁へ弁明書を提出
- 不利益処分の決定
弁明の機会は、比較的軽度な不利益処分の場合に付与されます。
行政庁は、不利益処分の名宛人に対して、不利益処分の内容などを書面で通知しなければなりません。
聴聞とは異なり、原則書面での審理ですので、行政庁が認めた場合にのみ、口頭での弁明が認められています。
書面での審理ですので、名宛人は陳述書とあわせて証拠書類等を提出することもできます。
まとめ
今回は不利益処分について解説しました。
申請に対する処分と混同しがちですので、両者の違いを明確にしておくことをオススメします。
過去問などを解いていくとわかりますが、選択肢の中でひっかけてくる問題も多々あります。
そういった細かい間違いをすぐにジャッジできれば、試験時間にも余裕が出てきます。
まだまだ、試験日まで時間がありますので、ゆっくり学習していけば大丈夫です!
では、また!